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間抜けな姿で立たされて、恥ずかしそうな風情を見せる亜由美の後ろで純子も立ちながら、亜由美のパンティ姿を眺めていた。
(これだけじゃないのよ。まだまだお楽しみはこれから)
神妙な顔をしながらも、内心では笑うのだ。
「おい、うるさいぞお前ら。それから転校してきた…朝倉か、ちゃんと授業を聞いているのか。『平家物語』の冒頭の部分は答えられるか?」
教師はクラス中のざわめきを静めようと一喝すると、亜由美に質問する
言われたとおり、亜由美は
「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。です」
と答えるが、声が震えているのはどうしようもない。
また、クラスメイトのざわめきはさっきよりは収まったとはいえ、まだひそひそと続いており、それが亜由美の耳に嫌でも入るのだ。
「なにあの格好、馬鹿じゃないの」
「いじめられてんじゃないの? 大人しそうだし」
などという声が亜由美の耳を打つ。
「よし、朝倉、その通りだ」
教師が言うと、解説を始めようとしたが、おかしな顔をして再度亜由美を振り返る。
「おい、もしかしてスカート捲くれてるんじゃないか?」
ずばり指摘されて、ただでさえ紅潮していた亜由美の頬が、これ以上ないくらい真っ赤に染まる。
「あー、ホントだ。白いパンツ丸見えジャン」
純子が背後から大きな声を出すと、さっき自分が捲り上げた亜由美のスカートの裾を抜き、正常な状態に戻して上げるのだ。
「なんだ、朝倉。気がつかなかったのか」
教師の問いにも、亜由美は
「はい」
と消えそうな声で答えるのみだった。
「どじだなぁ。もう座っていいぞ」
教師の許しを得て、亜由美は席に着く。
とりあえずスカートは元の状態に戻ったが、パンティむき出しの姿をさらされたことで、亜由美は落ち込んでいる。
その後ろでは、純子がやはり教師に質問をされ、正解を言って座る許可を得ていた。
(これくらいで参らないでね。今度はもっと酷い目にあうのよ)
純子は亜由美のブラが透けている、悲壮感が漂う背中を見ながら、クックッと笑うのだった。

授業が終わると、純子は亜由美を校内に設置されている自販機まで連れて行く。
「さっきは恥ずかしかった?」
自販機に硬貨を入れながら純子が聞く。
「お願い。あんな恥ずかしいことはさせないで」
亜由美が涙目で訴えるが、純子は意に介さずに、清涼飲料水のペットボトルを取り出した。
「お詫びのしるし、まあ飲んでよ」
ペットボトルを差し出されたが、亜由美は首を横に振る。
「言うこと聞かないと酷い目にあうって言わなかった? もう忘れたの」
純子は凄むと亜由美の足を思い切り踏んづけて、痛さに顔をしかめる亜由美の黒いセミロングの髪の毛を引っ張るのだ。
「さあ、さっさと飲んで」
純子に迫られ、亜由美は言われるままに何度も息継ぎをしながら中身を全て飲み干した。
「そうそう、素直でよろしい。でも、さっき授業中に先生に指されて正解言ったよね。あれ、約束違反よ」
亜由美ははっとした。
そういえば、昨日の放課後に、授業中に手を上げない、さされても最初から正解を言わないと一筆入れさせられていたのを思い出した。
「あれは、いきなり聞かれたから……でも、どうして正解言っちゃいけないんですか?」
「本当は正解を分かっている成績が良いあんたが、わざと間違った答えを言わされる。そこが面白いんじゃないの」
純子は邪悪な笑みを浮かべると、とんでもない答えに唖然としている亜由美の背中に手をやる。
「さあ、次の授業が始まっちゃう。戻ろう」
そうして二人で歩く姿は、はたから見れば友人同士にしか見えないのだった。

2時限目、後ろの純子から何かまた仕掛けられるんじゃないかと恐れていた亜由美だが、なにごともなく授業を受けていた。
ひとまず安心していた亜由美だが、さっき飲まされたペットボトルのせいか、だんだんと尿意がわきあがってくる。
(次の休み時間にトイレに行こうっと。早く授業終わんないかな)
こういうときほど、何気ない教師の説明がやたらと間延びして聞こえるものだ。
やっと2時限目が終わり、亜由美が席を立とうとしたところ、純子達がやって来て亜由美の席を取り囲むように立ちはだかる。
「どこに行くのよ。お話でもしましょうよ」
純子が言うが、しかし亜由美はトイレに行きたい。
「純子さん、ちょっとトイレに行きたいんですが」
うかがうような目で話す亜由美だが、純子はニヤニヤ笑いながら首を横に振った。
「だーめ。これから亜由美ちゃんのおしっこ我慢ゲームの始まりなんだから。あんたがどれくらい我慢できるかって、もうみんな賭けてるのよ。正解した人は今日の掃除当番免除が特典なの」
そんな、と亜由美は愕然とする。
排泄という人間の生理現象まで、制限しようというのか。
だが朱実が横から手を出して、亜由美の顎をつかむと
「あたしは4時限まで持つって賭けたんだからね。そこまでは我慢してよ」
と告げる。
「ちなみに亜由美、あんたの勝利条件は放課後まで我慢すること。我慢できたら掃除当番免除だし、普通におしっこも出来るわ。じゃあせいぜい頑張ってね」
純子はそう一方的に告げると、
「じゃああたしはトイレに行って来るから、亜由美を見張っておいて」
と言い残して去っていった。
「待って」
後を追おうとした亜由美だが、寿美子や朱実が立ちはだかる。
「おしっこ我慢ゲームの主役がトイレに行っちゃ話しになんないでしょ」
と、腰を浮かした亜由美を強引に席に着かせ、亜由美の黒い、艶のある髪を引っ張って脅す。
「我慢できないからって、お漏らしはやめてね。こっちまで流れてきちゃったら迷惑だから」
朱実たちに囲まれ、亜由美はまた顔を強張らせるのだった。
(トイレにも行かせないなんて酷い……放課後まで我慢できるのかしら)
尿意を覚えてきた亜由美にとり、放課後までとは気の遠くなるような時間であった。

3時限が終わり、だんだんと亜由美の尿意は高まってきていた。
休み時間になると、純子たちが取り囲み、亜由美に席を立たせない。
「どう、結構きついんじゃない?」
純子が楽しそうに尋ねる。
コクリと首を縦に振る亜由美に対し、
「じゃあ先生にウンチに行きたいんです、って手を上げたら、トイレに行っていいわよ。あと、教室でお漏らししても構わないわ。おしっこ我慢するのがつらくなったら試してみてね」
と純子はまた邪悪な考えを披露するのだ。
そういわれて情けなさそうな顔になる亜由美だ。亜由美が顔を上げると、教室の前のほうにいて気の毒そうな顔で見ている生徒と目が合ったが、その生徒は目が合うとすぐ視線をそらしてしまった。
またちょっと見回すと、純子達に囲まれている亜由美をニヤついて見ているグループもある。
同情、憐憫、嘲笑、好奇心、いろいろな視線が亜由美に浴びせられている。
しかし、誰一人として亜由美を助けようという人間はいないのだ。
(どうしよう、放課後まで我慢できそうにないよ。ウンチしたいって言うしかないのかな)
今すぐにでもトイレに駆け込みたい亜由美だ。
純子たちにからかわれながらも、からかいの言葉が耳に入らないほど、亜由美はせまる尿意に耐えていた。


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