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「これなんかいいんじゃない? あんた肌が白いから、黒が絶対映えるって」
純子は亜由美の白いパンティの上に、香子の黒いナイロンパンティを当てて、一人で頷いている。
そしてどう返事をして良いのか迷っている亜由美に、純子はとんでもないことを言い出した。
「明日学校にこれ穿いて来てよ。ブラもね。その方がカッコいいって」
純子は手に持った香子の黒のパンティとブラを亜由美にかざす。
スカートを捲くったままの姿で、亜由美はとんでもないとばかり首を横に振った。
白のブラでさえ透けるのが嫌でタンクトップを着ていたのに、よりによって黒の下着を身に着けるなんて、とてもそんな勇気はない。
「でも、ブラのサイズも合わないし……」
と控えめに言うが、純子は不満そうだ。
「いいから、この、黒のブラとパンツ穿いて来なさいよ。ブラも大してサイズが違わないでしょ。あ、そうそう。タンクトップなんて暑苦しいのはもちろん抜きでね。また汗臭くさいなんて言われちゃうよぉ」
一方的に言うと、亜由美の足元に黒のブラとパンティを放り投げる。
「それからあんたのスカート丈、長いんだよね。いまどき膝下まで丈があるなんてダサいって。明日はもっと詰めてきてよ。分かった?」
亜由美の返事も聞かずに命令を下す純子だ。
そうして黙って唇をかんでいる亜由美に向かい、セーラー服の上から亜由美の盛り上がった乳房を掴むと、こね回し始める。
思わず亜由美は払いのけようとするが、純子はそれを許さない。
「スカート捲くってる手を下ろしたら、明日は本当に下着姿で廊下に放り出すからね」
と、またも脅しとも本気ともつかないことを言うのだ。
そして乳房を掴まれて苦痛と恥ずかしさに、幼くも可愛らしい顔をゆがめる亜由美を見ながら、
「ねえ、朱実達が今どこに行ってるか知ってる? 今日撮ったあんたの記念写真を現像しに行ってるの。現像をセルフサービスで出来る便利な店もあるんだよね。あんたがいた田舎にはそんな店なかったかな」
と純子は、強張る亜由美を見ながら愉快そうに笑う。
「それから言って置くけど、私の言うことは素直に聞いたほうがいいよ。もし聞き流すような舐めた真似したら、もっと酷いことになるから」
乳房を揉みながら、亜由美に顔を近づけると純子はさらに続ける。
「今日だって、大した事言ってないでしょ。私だって普段からピンクやイエローのブラなんて平気で着てるし、スカート丈も短いでしょ。全然大したことじゃないって」
というと、乳房を揉んでいた手を止め、亜由美の強張った頬をぴたぴたと軽く叩く。
「明日来なかったら、このマンションの各部屋に記念写真をばら撒いてあげるから。あんた顔に似合わずおっぱいは大きいから、みんな大喜びするんじゃない? じゃあまた明日学校でね」
純子は分捕った香子の紫色のパンティをカバンに詰めると、そそくさと玄関に向かう。
「待ってください。純子さん、お話が……」
亜由美があわてて追いかける。姉のパンティを持ち逃げされ、明日の服装にも条件を付けられたままではたまらない。純子と話をしてなんとはしなくてはと思った亜由美だったが、純子は聞く耳を持たなかった。
「じゃあね、亜由美ちゃん。また明日」
靴を穿くと、亜由美を脅していたときとはうって変わった愛想のよさで、純子は去っていった。
(もう、どうしたら良いのよ)
強引に追う事もためらわれ、亜由美は床に座り込んだ。
(明日、黒い下着を着けて来いとか、スカート丈詰めろとか言われても。どうしたら良いんだろう)
香子に相談しようかとも思った。
大学では空手部で、黒帯の腕前である。
気性もさっぱりとした外交的な性格で、大人しい内向的な亜由美は羨ましく思うのだった。
相談すれば、いい知恵をだしてくれるのではと思う。
しかし、乳房むき出しの写真を撮られ、それをばら撒くといわれたのが気にかかる。
内気な亜由美にとって、そんなことをされたらもう生きていられないほどの屈辱だ。
何とか写真が公開されるのだけは防ぎたい、そう考えるうちに、段々と亜由美の考えは迎合する方向へと変化してくるのだ。
(そうだ、スカート丈だってみんな短いんだし、そんなおかしなことじゃない。普通よ。それにクラスでも、色柄物のブラを着けている人もいたし)
言われた通りにとりあえずスカート丈を短くして、純子の機嫌をとってみようと思った。
(まったく純子さんを無視するわけじゃないし。スカート丈もみんなに合わせるかと思えば平気よ)
これは全然平気なこと、と自分の気持ちを誤魔化そうとする亜由美は、膝が見える程度に大人しく裾上げをするのだった。
そして制服を脱いで、純子に渡された香子の黒い下着を己の裸体に当ててみると自分が背伸びしたというか、急に大人びた風に見えるのが、自分でも不思議だった。
しかしやはり大人しい亜由美には、黒の下着は大胆すぎる色である。
(やっぱりこれは無理。スカートの裾上げが精一杯だわ)
亜由美は黒の下着を香子のタンスへと戻すと、大きくため息をついた。
(明日から私、どうなるんだろう。お金とられたりするのかしら……)
もし酷いことを要求されたら、香子に打ち明けよう。
今は写真を撮られたこともあるし、出方を見よう。ただの悪ふざけかもしれないしね、と亜由美は無意識の内に楽観的な見方をするのだった。

翌日、姉妹揃っての朝食を摂ると、亜由美はカバンを持って玄関へと向かう。
その後姿を何気なく見送った香子は、ちょっと首を傾げた。
「亜由美、タンクトップ着ないの?」
恥ずかしがりやで、いつもブラのラインが見えないようにとタンクトップなどを必ず着ていた亜由美が、今日はブラの線を透けて見せていた。
それによく見ると、スカート丈も短くなっている。
亜由美は振り返ると、
「だって、東京は暑いから。それにブラのラインなんか見えてもどうってことないって」
精一杯の笑顔を見せて言う。
内心は学校に行きたくないのだが、香子に心配を掛けたくないという気持ちからである。
「スカートの丈も詰めたの?」
重ねて香子が聞くが、
「うん、だってみんななんかこれ以上短いしね。普通だよ。じゃあ行ってきまーす」
と亜由美は飛び出して行った。
「あらあら、東京に出てきて、染まっちゃったのかしら」
苦笑しながらの香子の独り言だ。
まさか最愛の妹が、クラスメートに脅されてスカートの裾を詰めさせられ、タンクトップの着用を禁じられたなどと考えもしない。
(あんまり変な方向に行くようだと注意しなくちゃいけないけど、これくらいなら良いかな)
などと呑気に考え、香子は食後のコーヒーを口にしていた。


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