「あー、いてー、なにすんのよ」
朱実が痛そうに尻をさすって立ち上がる。
亜由美のほうはむき出しの乳房を両手で覆って、前かがみになって顔を強張らせていた。
クラスメートにブラを奪われ、上半身丸出しにされ恥ずかしさに震えている亜由美と、わざとらしく怒りの表情を浮かべる朱実を、須美子達がはやし立てる。
「朱実、なに転校生にやられてんだよ。カッコわりい」
「あゆちゃんも大人しそうに見えて、実はやる気満々じゃないの? 実は前の学校は喧嘩が原因で追い出されていたりして」
と好き勝手に囃すのだ。
それに乗った朱実が
「喧嘩売るわけ? じゃあ買うしかないね」
とわざとらしく怒った顔つきで、亜由美に近づいてくる。
故郷でも友人と仲たがいはしたことはあったが、ちょっと口を利かなかったくらいですぐ和解していた。暴力なんて縁がなかった亜由美である。
「いえ、喧嘩なんてする気はないです。ただいきなり下着を取られて胸を触られたから」
乳房を覆いながらも必死に言うが、朱実は受け付けない。
「何言ってんだよ。たかが冗談にマジで暴力振るいやがって。いいじゃん、あんたのやりたいようにタイマン張ってやるから」
朱実は亜由美の前に立ち、胸を押さえている手を掴もうとする。身を縮める亜由美は必死で防戦しながらも、誰か仲裁に入ってくれないかと純子たちをチラチラ見るのだが、純子始め他の連中は、ニヤニヤ笑いながら見ているだけだ。
「純ちゃん、とめて、お願い。喧嘩なんてしたくない」
朱実に手を掴まれて乳房を露出させられつつある亜由美は、純子に呼びかけるものの返答は空しかった。
「揉め事は当事者同士で解決してね。うち等関係ないから」
純子はあっさりと亜由美を見捨てる返事をする。
唖然とする亜由美の腕を朱実が掴みながら、覆っている胸から完全に引き剥がした。
必死に亜由美はこらえるものの元々力がないので、再び乳房が露出される破目になった。
またもや亜由美の中学生にしてはあまりにも見事な乳房が、今度は無理やりに露出され、純子たちがヒューと口笛を吹いたりと囃す。
恥ずかしさのあまり逃げだしたいと思う亜由美だが、上半身裸では廊下に出るわけに行かない。
「見事に膨らんでるじゃない。勿体無いから隠すことないって」
朱実はせせら笑いながら、脅える亜由美の両手首の部分を掴んでぐいぐいと押し付けていく。
亜由美は自然と押される格好になり、後退した末に教室の前方にある黒板に押し付けられた。
黒板を背にした亜由美の背中は、ひんやりと冷たい感触を感じている。
「どうしたの? さっきの勢いは。ほら、文句あるんでしょ」
朱実はすっかり大人しい亜由美を飲んでかかっている。掴んだ亜由美の両手首をも、黒板に押し付ける。
亜由美はむき出しにされた乳房をさらされた恥ずかしい姿のままであった。顔を真っ赤にしている亜由美の目の前に朱実が顔を近づけ、凄む。
「何とか言ってよ。自分から喧嘩売ってきたくせにさ」
と両手を拘束したままで、亜由美の太ももの部分に膝で軽く蹴りを連発する。
蹴りは別に痛くはないのだが、上半身裸のままでクラスメートに凄まれて、攻撃されているのは精神的につらい。
「ごめんなさい、突き飛ばしてしまったことは謝りますから」
どうしようもなく、心ならずも侘びを入れる亜由美である。
「何偉そうに謝ってんだよ。このデカパイ」
朱実は亜由美の背中に手を回すと、力を込めて押し出した。
その勢いで亜由美は教室の床に倒れこみ、咄嗟に両手を付いて四つん這いの格好になった。
亜由美の乳房は倒されたときに大きく揺れ、そして四つん這いになった今は重々しく垂れ下がった格好である。
無様な格好のままで周囲を見上げる亜由美の目に、無表情で冷徹に観察している目の純子と、せせら笑って眺めている須美子達が映っていた。垂れ下がった乳房を片手で覆い、もう片手を床について亜由美は立ち上がろうとしたが
「立たないでいいからその格好で謝りなさいよ。本当にすまないと思うのなら土下座くらいしてくれなくちゃ」
朱実がしゃがみこんで、亜由美の顔を覗き込むように要求する。
誰も自分を助けてくれる人がいない孤立無援の状況で、亜由美は仕方なく乳房を覆っていた手を離し、床に両手を付いて頭を下げる。
「朱実さん、突き飛ばしてしまってすみませんでした」
自分がどんな悪いことをしたというのだろう、悔しさと惨めさで亜由美の目に涙がにじんで、床にポツンと雫が落ちる。
制服のスカート姿で、上半身は裸という惨めな格好のまま、亜由美は床に膝を付いた姿で涙を拭うのだった。
「朱実、もう気がすんだ?」
今まで傍観していた純子が口を開いた。
「もう私はいいわ。謝ってくれたから」
朱実がそう答えると、純子は亜由美に近寄る。
「じゃああゆちゃん、私もあなたに話しがあるんだけど、聞いてくれる?」
純子はニコニコと笑っているが、その目付きは何か企んでいるようで、亜由美には好意的な感じと思えない。
(なんだろう、純子さんに嫌われるような事した覚えはないのに)
転校初日の昨日、あんなに気さくに話しかけてくれたのにと、亜由美は腑に落ちない気持ちである。
「お話ですか……その前に服を着せて下さい」
亜由美が控えめに要求するが、純子が跳ね付ける。
「いいじゃん別に、女同士だし。それに平気で初日から掃除をサボる人だから、服着た途端にまたさっさと出て行かれちゃたまんないよ。いいからその格好でいれば? せっかくの立派なおっぱい隠すのも勿体無いし」
純子はそういうと、亜由美の前にしゃがみ込む。
亜由美は相変わらず上半身は剥き出しのままで、セーラー服とタンクトップ、ブラジャーは、亜由美の手の届かない教室の後方に放り投げられている。
乳房を隠したいのだが、純子がそれを許さない。
「いいじゃない、もうちょっと拝ませてよ」
と言うと左右を見まわし、目で合図をする。寿美子と朱実が亜由美の両脇につき、床に自然と正座した格好になっている亜由美の両腕を、両サイドから押さえつける。
「放してください!」
亜由美は抗議し、腕を振りほどこうとするが、がっちりと押さえつけられてしまっているためにどうにもならない。むき出しの乳房がぶるっと振るえただけであった。
「で、本題に入るんだけど、あゆちゃん。昨日から思っていたけどあんたおっぱいだけじゃなくて、態度もでかいね」
純子がからかうように言うが、亜由美には思いがけない言葉だ。
「私が、ですか?」
態度がでかい、という思わぬ指摘に亜由美はやっとの思いで聞き返すが、純子はすぐには答えずに、フンと鼻を鳴らすと、ポケットからタバコを取り出してライターで火をつける。学校で堂々とタバコを吸うのと、火をつける手つきが手慣れたものなのに、亜由美は軽く衝撃を受けた。