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無気力とみなされる授業態度で、得意科目の数学の教師の信用をなくしてしまった亜由美は、いつものようにパンティ丸出しで掃除をさせられた後、帰ろうとして校門を出たところでいきなり肩を叩かれた。
はっとして振り返ると、純子が笑みを浮かべて立っている。
また何か命令をされるのだろうかと怯える亜由美に、純子は
「今日久しぶりにあんたの部屋に遊びに行きたいんだけど、いいかな。勉強も教えて欲しいし」
と持ちかける。
断ることも出来ずに、純子と連れ立ってマンションに帰る。
亜由美が郵便受けを開けると、親友の梓からの手紙が入っているのが見えた。
純子の目から隠そうとしたが、すばやく見つけられる。
「誰からの手紙? ああ、田舎の友達からね」
亜由美の危惧をよそに、興味もなさそうなそぶりで頷く純子である。
亜由美の部屋で学校では優等生の純子は教科書やノートを開き、さすがというべきか真剣に亜由美に分からない部分を聞いてくる。また、逆に亜由美が質問をすると、ちゃんと教えてくれるのだ。
「バカやるときは朱実達、勉強するときはあんたと、付き合いも使い分けてるから」
純子は笑いながら言う。亜由美に教えてもらうと、ありがとー、といちいち礼を言うその真剣な横顔を見ていると、亜由美はこの人が本当に自分をいじめている相手なのだろうかと不思議に思うくらいだった。
勉強が一段落付くと、純子は少し休憩しようと、亜由美にコーヒーを淹れるように頼む。
台所で亜由美が2人分のコーヒーカップを部屋に運ぶと、純子が梓から来た手紙を勝手に開封して、目を通していた。
「純子さん、勝手に手紙を読まないで」
コーヒーカップを机の上に置き、手紙を取り返そうとしたが、純子に突き飛ばされた。
「逆らうなって何度言えば分かるのよ」
呆れたように純子は、尻餅をついている亜由美に言う。
「ペナルティとしてパンツ脱いで」
「そんな、姉がいつ帰ってくるか分かりません」
「スカート穿いてりゃばれないでしょ」
哀れにも、自宅でノーパンにさせられる亜由美だ。
今日一日穿いてきた、白いパンティを脱ぐと、純子に渡す。
亜由美の温もりがこもっているパンティを手に取ると
「あー、懐かしいね。これあんたがお漏らしして、水洗いして教室で干したときのパンツだよね。いやー、あんときは傑作だったわ」
と、一人で受けている純子は、パンティを床に放ると手紙を読み始める。
ふんふん、と読み進めていた純子が、突然いやらしい笑みを浮かべて
「『今の学校、あまり楽しくないみたいだね』って部分があるんだけど。亜由美、あんたどんな手紙出したの?」
と聞く。
「もしかして、いじめられてお漏らししたり、毎日パンツ剥き出しで掃除させられてることでも書いたわけ?」
ククッ、と笑いながら聞く純子だ。
「そんなこと、書いてません。ただ、前の学校が懐かしいなって…」
自分が脅されて晒し者になっているとか、そんなことを書くわけには行かないし、第一、梓たちには死んでも知られたくないくらい恥ずかしい。
前の学校が懐かしい、と書いた後に、今の学校にはなじめないのだという趣旨のことをつけたしたのだが、それは純子には黙っておくことにした。
「ふーん、どうせ今の学校は好きじゃないとか書いたんでしょ。自分が性的イジメにあってるって、あんたの性格なら友達には隠しておきたいだろうし」
そして、純子は梓からの手紙を自分のカバンに仕舞う。
「純子さん、大切な友達からの手紙なんです。返してください」
亜由美は純子に抗議するが、取り合わない。
「明日には必ず返すから。ちょっと借りるだけだって」
しかし亜由美も引き下がらない。当然だ、梓の手紙なんて純子には意味のないものだし、自分にとっては大事なものなのだ。
控えめながらも手を伸ばして手紙を取り返そうという亜由美と、薄笑いを浮かべて非力な亜由美をあしらう純子のやり取りが続く中、玄関がガチャガチャと開けられる音がした。
「香子お姉さんが帰ってきちゃった」
動きを止めて亜由美がつぶやく。
「そう、じゃあそろそろ帰ろうかしら。明日にはちゃんと手紙は返すから、安心して」
亜由美が止めるまもなく、純子はカバンを手にすると、玄関に向かう。そこでちょうど靴を脱いだばかりの香子と顔を合わせた。
香子は見慣れない少女を見て怪訝な顔をすると、その後ろから追ってきた亜由美に対して
「あら、亜由美のお友達?」
と聞いた。それに対して亜由美よりも先に
「はじめまして。クラスメートの純子と言います。亜由美ちゃんに勉強を教わろうとお邪魔していました」
と、無邪気な笑顔で如才なく挨拶する純子である。そして抜け目なく香子を観察する。
爽やかさを醸し出すショートヘアに、理知的な整った顔。女性にしてはやや高い身長と、
スポーツでもやっているのかスリムな肉体ながら、突き出るように存在を誇示している乳房。おっとりとした雰囲気の亜由美と違い、優しげながらもいかにもお姉さんという雰囲気を感じさせている、しっかりした大人の女性という印象である。
(これが亜由美の姉か。まさか亜由美をいじめてること、知らないよね)
危惧を押し隠した無邪気な笑顔のままで、純子はとっさに玄関にしゃがんで自分の革靴を穿くと、ついでとばかり香子が脱いだばかりの靴を揃える。
(あら、気がつく娘さんなのね)
純子の些細な動作に感心した香子である。
軽い茶髪だが愛らしい顔立ちで無邪気な笑顔を見せる。そしてきちんと挨拶をして、その上香子の脱いだ靴まで揃える。いまどきの娘にしてはかなり躾が良いと、素直に感じていた。
「そんな慌てて帰らなくても、もう少しゆっくりしていきなさいよ」
純子に対して好意が芽生えた香子である。亜由美が転校してからできた、せっかくの友達をもてなそうという意図もあった。
「いえ、もう分からないところもすっかり教わりましたし、家の手伝いもしなくちゃいけませんから」
実は家事の手伝いなど全くしたことがない純子である。そして困惑したように香子の後ろで立ち尽くす亜由美に
「じゃあ駅まで付き合ってもらえる? 参考書選びに付き合って欲しいし」
と持ちかける。
「行ってあげなさいよ。あんまり遅くならないようにね」
香子も勧める。
逆らえずに亜由美は浮かない顔のまま玄関から出た。
「遠慮せずにまたいらっしゃいね」
何も知らない香子は、亜由美と、その大事な友達と思っている純子を送り出すのだった。
「あんたの姉さん、実際に見るとかっこいいじゃん。スタイルも良いし、あんたと違って堂々としてるし」
純子と亜由美は並んで歩きながら話している。
「で、いじめられてることは言ってないんだ?」
「言えるわけないじゃないですか」
例え実の姉にでも、性的イジメで晒し者になっているなどと、言えない亜由美である。
「ふーん、まああんたならそうか。今日部屋に戻っても、せいぜいばれないようにしてよ。
あんたの姉、結構いい大学に行ってるんでしょ? 馬鹿じゃなさそうだから、あんたの顔が曇ってると何かおかしいと思うかもしれないから」
そこで純子は何かひらめいた顔になる。
「そうだ、ところで、なんかあったときのためにあんたの自宅の電話番号教えてくれない?」
突然の純子の申し出に、亜由美は戸惑った。
「なんかあったときのためって、何ですか?」
電話番号など教えたくはない。もしや休みの日でも呼び出す気なのでは、と恐れも抱いた。
「あー、大丈夫。別に電話で急に呼び出したりとかしないから。いいから教えてくれるよね、ノーパン亜由美ちゃん」
自室でパンティを脱がされたままで外に出てきた亜由美はノーパンのままだった。
短いスカートの下の尻が見えはしまいかと、不安でもある。そこを純子はついてきた。亜由美のスカートの裾を掴むとまた
「早く電話番号教えろよ。スカートまくるよ?」
と耳にそっと吹き込んでくる。
人通りの多い駅前の商店街で、ノーパンのスカートを捲くられるなど死ぬほど恥ずかしいことだった。
仕方がなく亜由美は電話番号をメモしたが、それでも
「姉と暮らしているので、お電話されても……」
なるべく電話しないでくれと遠まわしに訴える。
「大丈夫、心配すんなって。じゃあさよなら。あ、本屋で立ち読みでもして、10分くらい時間つぶしてから帰ってね。一応私の参考書選びに付き合ってもらうことになってるから」
なんで電話番号をいきなり聞いたのかと不安に思いながらも、亜由美は言われたとおり本屋に入り時間を潰す。そして亜由美が本屋に入ったのを見届けた後、純子は携帯電話を取り出して、どこかへ掛け出すのだ。


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