「まあまあ、おっぱいを小さくするなんて、無理言っちゃ可哀想よ。その代わり、出来ることをやってもらおうよ」
そして純子は亜由美の下半身を覆うパンティの縁を掴むと、ぐいと引っ張った。
思いっきり引っ張ったので、千切れるのではないかと思うくらいゴムが伸ばされる。
「明日は香子の黒いブラとパンツ穿いてきてね。絶対似合うから。それとスカート丈ももっと短くして。あと20センチはね。乳房を小さくする命令よりましでしょ、分かった?」と純子に凄まれ、亜由美は頷くのだった。
その間、朱実たちが伸ばされた亜由美のパンティの縁から股間を覗き込み、
「大人しい顔して、まん毛ちゃんと生えてるじゃん」
「せっかくだから、あそこも見せてもらおうよ」
などと囃し立てる。
純子がパンティの縁を掴んでいた手を放す。パチンと言う音がし、ゴムの弾力が亜由美の体に衝撃を与える。
「まあいいじゃない。明日、黒の下着でよろしくね」
純子がそういい、スカートを返してあげるよう寿美子に指図する。
亜由美がずり上げられていたブラジャーとセーラー服を直し、スカートを身に着けようとしたとき、同じクラスの生徒が2人、話しながら連れ立って入ってきた。
下半身パンティ姿でスカートを手に持ち、純子たちに囲まれている亜由美をみて一瞬ぎょっとしたが、すぐにそ知らぬ振りで会話を続ける。
しかし知らん振りを決め込んでいながら、スカートを穿こうとする亜由美のほうをちらちらと興味本位で見るのが亜由美にも分かる。
(誰も助けてくれないんだ……)
改めて孤独感をかみ締める亜由美であった。
マンションに帰ってからすぐに香子の部屋に行き、タンスから黒いブラジャーとパンティを取り出して自室に持ち帰っていた。
勝手に姉の下着を持ち出すのは気が咎めたが、純子に命令された以上仕方がない。
下手に逆らって、また晒し者にされるのは死ぬほど嫌だった。
ただ、香子が下着がなくなっているのに気がつかないかが心配だったが、この日は香子の帰りが遅く、しかも飲み会かなにかで酒が入っていたので、すぐ寝てしまったのが救いだった。
翌日、例え大学の講義が一時限にはない日でも、朝食は必ず亜由美と摂ろうと決めていた香子なので、ぼさぼさの髪をかき上げながら起きてきた。
「おっはよー、亜由美。なんか喉乾いたから水ちょうだい。あー頭痛い」
水色のパジャマ姿の香子は、片手で口を覆いながら大あくびをしている。
「もういいって、無理に起きてこなくても。自分でちゃんとやるから」
亜由美はコップに水を注ぐと、ハイ、と差し出す。
美味そうに飲み干す香子に
「今日はまだ寝ていても良いんでしょ。自分で支度するから良いって」
と言う亜由美は、制服の下に香子の黒いブラジャーとパンティを身に着けていた。
香子にこのことを知られないように、何とか香子をベッドに押し戻そうという亜由美である。
「そうは行かないわよ。二人きりの家族なんだから、朝ごはんくらい一緒に食べないと」
と香子も亜由美の心中を知らないままに粘るが、やはりだるそうだ。
「もういいって、二日酔いの相手なんてしてる暇ないんだから。学校行くの遅れちゃうよ。それにもういつまでも子供じゃないんだから」
亜由美はわざと快活に言うと、香子の背中を押して、部屋に押し戻す。
「あらそう、じゃあ悪いけど今日はもう少し寝かせて、ごめん亜由美」
香子を部屋に押し返すと、亜由美はほっとして身支度をする。
(良かった、とりあえず香子おねえちゃんの下着を身に着けていることがばれなかった)
安堵の思いで学校に向かう亜由美であるが、しかしこれから夏服の白いセーラー服と、いっそう短く裾上げされたスカートの下に大胆な黒の下着を着けて登校するという、新たな苦難が始まるのであった。
電車の中で、亜由美は激しい羞恥心に襲われていた。
タンクトップを着ていない昨日も心細かったが、そんな恥ずかしさは今思えば可愛いものだった。
透けているであろう黒いブラの線に、いやらしい視線が集中している気がするのだ。
(気のせい、気のせいよ、別に珍しいものじゃないんだし)
注目されているのは気のせいとばかり、言い聞かせようとする亜由美だが、途中、ガラが悪そうな商業高校の女子高生が一人乗り込んできた。亜由美に一瞥をくれると、「フン」と面白くなさそうな表情になり、じろじろと亜由美に冷たい視線をぶつける。
なんだろう、と亜由美は気がつかない振りをしていたが、その次の駅で、その女子高生の友人らしいのが2人乗ってくると、亜由美に聞こえよがしに
「みてよ、あの娘。中学生の癖に生意気にも黒いブラしちゃってさ」
「あ、ホントだ。10年はええっつーの」
「大人しそうな顔して、大胆ね。援交でもしてるんじゃないの」
など、亜由美の背後で話し始めるのだ。
(好きでこんな下着着けてるんじゃないのに)
亜由美は理不尽な悪口をじっと耐えていたが、そうすると
「聞こえない振りしちゃってさ。シカトしてやがんの」
「なんかむかつくよ、こいつ。うちらが降りる駅で引き摺り下ろして、ヤキ入れてやろうか」
と本気とも脅しとも付かない事を言い出す。
亜由美は聞こえない振りをしているが、因縁をつけられて心臓が早鐘のように鳴っている。
もっとも女子高生たちは口だけで、実行に移す度胸はなかったのだろう。彼女たちが降りるとき、それぞれ亜由美の横顔にガンを飛ばすだけで、亜由美が恐れていた実力行使に出ることはなかった。
ただ、最後に降りた一人が、穿いていた運動靴で思い切り亜由美の革靴を踏みつけた。
痛さに顔をしかめた亜由美の方を憎憎しそうに見ながら、その女子高生達は改札へと向かう。
どうして、こんな目にあうのあろうと、亜由美はまた悲しみにくれるのだった。
亜由美は思い足取りで学校に着き、昇降口で靴を穿き替える。
すると、周りの生徒の視線が妙に気になるのだ。
中学生には珍しい黒いブラの透けのせいもあるが、昨日の亜由美の恥態を知っている生徒も居たためだろう。
「ちょっと、あの娘。昨日お漏らしして、洗ったパンツ教室で干してたんだって」
「えー、まじ?」
「まじまじ、あの娘と同じクラスの人に聞いたから。間違いないって」
「うわー、あたしだったら登校拒否もんだよ。よく出てこれるよね」
ひそひそ話と好奇心の視線を受けながら、亜由美は教室に向かう。
(私だってこんな学校来たくないよ……)
とぼとぼと教室に入ると、今まで聞こえていたざわめきが止まり、一斉に亜由美に視線が集まる。
気後れしながらも、亜由美は純子の前に行く。
「おはようございます、純子さん」
「おはよー、亜由美。今日は黒いブラとは大胆ねぇ。どうしたの?」
自分が強要したくせに、白々しく言う。
返事が出来ない亜由美に対し、自分のスカートの裾を摘んで持ち上げる仕草をする。
亜由美にスカートを捲くれということらしい。
一瞬固まった亜由美だが、言うとおりに自分でスカートを持ち上げるのだった。
「あらー、ストリップ? 自分で見て欲しいというなら、見てあげるよ」
亜由美がスカートを持ち上げ、ナイロンの黒いパンティを露出させる。
フロントの上部に草花の模様が一つデザインされた黒いパンティは、光沢を放って高級感を醸し出し、色白の亜由美の肌を引き立たせる役目を果たしている。
「かっこいいじゃん。だから似合うって言ったでしょ」
純子たちは朝のホームルームが始まるまで、亜由美の露出させられたパンティ姿を眺めながら囃し立てるのだった。
「ねえ、黒い下着で登校した感想はどう。注目浴びて気持ちよかった?」
からかわれた亜由美は、今朝の女子高生に嫌味を言われて足を踏まれたことを途切れ途切れに話し、さらに純子の被虐心を満足させるのだった。